消費税は原則として,国内で行われる全ての物品の販売・貸付,サービスの提供(「課税取引」という)に課される税金です。従って,国外の取引や借入金の返済,預金の預け入れなどは課税の対象となりません。(「不課税取引」という)。また,本来課税対象となる物品の販売・貸付,サービスの提供でも,取引の正確や社会政策的な配慮から,非課税となるものがあります(「非課税取引」という)。
このように同じ「売上高」「仕入高」「経費」であっても,課税・不課税・非課税が混在することがあります。
消費税を国に納める人(「納税義務者」という)は,下記のような国内取引を行う事業者と輸入取引を行う者です。
区分 | 納税義務者 |
---|---|
国内取引 | 国内において,消費税の課税対象となる取引(商品の販売,役務の提供,資産の貸し付け等)を,事業として対価を得て行う事業者(法人及び個人事業者) |
輸入取引 | 課税対象となる貨物を保税地域から引き取る者(事業者にかかわらず一般消費者も含む) |
ただし「国内取引」については,次の事業者は納税義務が免除されます。(このような事業者を「免税事業者」といい,免税でない事業者を「課税事業者」といいます)
(1) その課税期間(法人は事業年度,個人は暦年)の基準期間(法人は前々期,個人は前々年)の課税売上高(注1)が1,000万円以下の事業者
(2) 設立第1期目又は第2期目の法人(期首における資本[出資]の金額が1,000万円未満の場合に限る)
(3) 開業の年又はその翌年の個人事業者
注1:基準期間が免税事業者であった場合は,税込み金額で判定。基準期間が課税事業者であった場合は,税抜き金額で判定。
消費税における申告計算は,下記の計算式により算出するのが原則的な方法です(「本則課税」という)
【本則課税の計算式】
課税期間の課税売上に対する消費税額 - 課税期間の課税仕入れに含まれる消費税額 = 納付すべき消費税額
【本則課税の計算式】
課税売上高 1,000万(税抜き)
課税仕入高 800万(税抜き)
<計算>
(1)課税売上に対する消費税額 1,000万×5%=50万
(2)課税仕入れに含まれる消費税額 800万×5%=40万
<納付税額>
(1)-(2)=50万-40万=10万
課税売上:損益計算書状の「売上」の他,「営業外収益」や「固定資産の売却等」も対象になります。
課税仕入:「商品仕入れ高」「製造原価」の他「販売費・一般管理費」「設備投資資産の購入」も含まれます。
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合,「本則課税」に代えて「簡易課税」により消費税の申告計算をすることができます。
「簡易課税」は,「課税売上に対する消費税額」に「みなし仕入率」を掛けて計算した金額を,「課税仕入れに対する消費税額」とみなして計算します。
【簡易課税の計算式】
課税期間の課税売上に対する消費税額 - 課税売上に対する消費税額 × みなし仕入率 = 納付すべき消費税額
課税売上:損益計算書状の「売上」の他,「営業外収益」や「固定資産の売却等」も対象になります。
課税売上の取引の内容は,5種類(「事業区分」という)に区分されます。一事業車の課税売上の中には,異なる事業区分が混在する場合がありますので,取引毎に事業を区分する必要があります。
例えば,自動車整備業の場合,
新車を仕入れて事業者に販売 → 第一種事業
新車を仕入れて消費者に販売 → 第二種事業
下取り車を板金・塗装して販売 → 第三種事業
損害保険等の代理店手数料 → 第四種事業
修理契約に基づく自動車整備 → 第五種事業
【簡易課税の計算式】
事業の種類 | 具体例 | みなし仕入率 |
---|---|---|
第一種事業 | 卸売り | 90% |
第二種事業 | 小売り | 80% |
第三種事業 | 製造・建設等 | 70% |
第四種事業 | その他 | 60% |
第五種事業 | サービス業・不動産賃貸等 | 50% |
本則課税の場合,課税仕入れにかかる税額の控除(「仕入税額控除」という)するためには,一定の要件が定められています。
下記の事項を記載した「帳簿」および「請求書等」を保存(原則として7年間)しなければなりません。
帳簿の記載事項 | (1) 取引年月日(商品の引渡日又は役務の提供日) (2) 取引先名(原則として正式名称:フルネーム) (3) 取引内容(商品名等) (4) 取引金額(消費税を含む総額) |
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請求書等の記載事項 | (1) 取引先名(原則として正式名称:フルネーム) (2) 請求書等の発行者名 (3) 取引年月日(商品の引渡日又は役務の提供日) (4) 取引内容(商品名等) (5) 取引金額(消費税を含む総額) |
その他,様々な規定がありますので注意してください。
簡易課税を選択できる事業者(=基準期間の課税売上高が5,000万円以下である事業者)は,本則課税と簡易課税でどちらが有利となるでしょうか?
一般的に人件費等の非課税仕入が多い場合は,簡易課税を選択した方が有利となります。例題を使って説明しましょう。
第5種事業であるサービス業を営んでいる甲社の課税売上は1,000万(税抜き)で,課税仕入れは200万(税抜き)であったとします。
■本則課税を選択した場合の納税額は以下の通りです
1,000万×5%-200万×5%=50万-10万=40万
■簡易課税を選択した場合の納税額は以下の通りです
50万(※)-50万×50%=50万-25万=25万
※1,000万×5%=50万
また,大規模な設備投資をする場合や,開業初年度で最初から赤字が見込まれる場合は,本則課税を選択すると還付になる場合もあります。ただし,課税方式を変更しようとする場合(簡易課税だったのを本則課税に変更した)2年間は変更できませんので,課税方式を変更するときは,翌年以降の経営計画を考えて変更することが大切です。
※消費税は届出書の種類や提出期限等が複雑ですので,届出にあたっては専門家に相談するようにしてください。
■本則課税の場合
1期目 | 2期目 | |||
税抜き | 税 | 税抜き | 税 | |
(1)課税売上 | 1,000 | 50 | 2,000 | 100 |
(2)課税仕入 | 200 | 10 | 400 | 20 |
(3)設備投資額 | 1,000 | 50 | 0 | 0 |
(4)税額 | ▲10 | 80 | ||
※(4)=(1)-(2)-(3)
2期合計の税額は,▲10+80=70 |
■簡易課税の場合(サービス業:みなし仕入率50%)
1期目 | 2期目 | |||
税抜き | 税 | 税抜き | 税 | |
(1)課税売上 | 1,000 | 50 | 2,000 | 100 |
(2)仕入税額控除 | 25 | 50 | ||
(3)税額 | 25 | 50 | ||
※(3)=(1)-(2)
2期合計の税額は,25+50=75 |
判定:70(本則課税)<75(簡易課税)
∴本則課税を選択した方が有利
免税点制度 |
課税事業者となる課税売上高の免税点制度の適用上限が,年1,000万円(従前は年3,000万円)に引き下げられます。 →判断基準 法人:平成14年4月1日以後開始する事業年度の課税売上高 個人:平成15年分の課税売上 |
---|---|
簡易課税制度 | 簡易課税制度の適用上限が年5,000万円以下(従前は2億円以下)に引き下げられます。 →判断基準 上に同じ |
総額表示の義務づけ | 事業者が消費者等に対して商品の販売・役務の提供等を行う際,あらかじめその取引価格を表示する場合,消費税額を含めた価格で表示しなければならない。適用は,平成16年4月1日から。 |
中間納付の回数が増加 | 直前の課税期間の年税額が4,800万円(地方消費税込みで6,000万円)を超える事業者については,毎月=中間11回,確定1回(従前は4回=中間3回・確定1回)となります。適用は,平成16年4月1日から。 |